不利益処分 第ニ節 聴聞
聴聞とは、名あて人への影響が大きい不利益処分については実施される意見陳述で、口頭審査主義がとられています。
聴聞を理解するには、聴聞に登場する3人のプレーヤーを理解する必要があります。
3人のプレーヤーとは、
- 当事者・参加人
- 主宰者
- 行政庁
この3つのプレーヤーが聴聞でどのようなことができるのか、考えていくと聴聞の手続きがわかりやすくなると思います。
ネコ丸
当事者は行政手続法 第16条1項、参加者は行政手続法 第17条2項、主宰者については第19条に定めらている。
マサル
当事者とは?
1 前条第一項の通知を受けた者(同条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は、代理人を選任することができる。
簡単にいうと、聴聞の通知を受けた者です。
参加人とは?
1 第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。
2 前項の規定により当該聴聞に関する手続に参加する者(以下「参加人」という。)は、代理人を選任することができる。
参加人とは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者です。
主宰者とは?
1 第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。
主宰者とは、聴聞を主宰する者です。
この人が中心になって聴聞の手続きを取り仕切っていきます。
聴聞の手続きの流れ
図1は聴聞の簡単な流れです。
それぞれの数字は以下の事を表しています。
- 聴聞の通知
- 主宰者の指名
- 意見陳述、証拠書類等の提出
- 調書・報告書を提出
- 不利益処分
この図を一度頭に入れながら条文を確認していきましょう。
行政手続法 第15条 聴聞の通知の方式
1 行政庁は、聴聞を行うに当たっては、聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項
二 不利益処分の原因となる事実
三 聴聞の期日及び場所
四 聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地
2 前項の書面においては、次に掲げる事項を教示しなければならない。
一 聴聞の期日に出頭して意見を述べ、及び証拠書類又は証拠物(以下「証拠書類等」という。)を提出し、又は聴聞の期日への出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出することができること。
二 聴聞が終結する時までの間、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができること。
3 行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合においては、第一項の規定による通知を、その者の氏名、同項第三号及び第四号に掲げる事項並びに当該行政庁が同項各号に掲げる事項を記載した書面をいつでもその者に交付する旨を当該行政庁の事務所の掲示場に掲示することによって行うことができる。この場合においては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに、当該通知がその者に到達したものとみなす。
行政手続法 第15条では、聴聞の通知の方式について定めています。
行政庁は、聴聞を行うにあたって、名あて人に通知をする場合は、書面で通知しなければなりません。
ここは必ず書面でなければならないので、注意が必要です。
行政手続法 第8条、行政手続法 第14条では、申請を拒否する処分、不利益処分については口頭、書面のどちらでも可能でしたが処分を書面でする場合は、理由も書面で示す必要がありました。
このように、どの行為が口頭でできるのか、書面でできるのか確認しながら条文を読むようにしましょう。
行政手続法 第15条1項、2項では、通知をした際に教示すべき内容が定められています。
行政手続法 第15条3項では、例外として不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合について定められています。
当たり前の話ですが、名あて人の所在が判明しないのであれば、通知することができないので例外を定めています。
行政手続法 第16条 代理人
1 前条第一項の通知を受けた者(同条第三項後段の規定により当該通知が到達したものとみなされる者を含む。以下「当事者」という。)は、代理人を選任することができる。
2 代理人は、各自、当事者のために、聴聞に関する一切の行為をすることができる。
3 代理人の資格は、書面で証明しなければならない。
4 代理人がその資格を失ったときは、当該代理人を選任した当事者は、書面でその旨を行政庁に届け出なければならない。
行政手続法 第16条では、代理人について定めています。
当事者は代理人を選任することができ、代理人は聴聞に関する一切の行為をすることができます。
また、代理人は書面により、代理人の資格を証明し、代理人の資格を失った場合は書面で行政庁に届け出なくてはなりまbせん。
ここでは、書面と指定されているので、口頭で行うことはできません。
行政手続法 第17条 参加人
1 第十九条の規定により聴聞を主宰する者(以下「主宰者」という。)は、必要があると認めるときは、当事者以外の者であって当該不利益処分の根拠となる法令に照らし当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者(同条第二項第六号において「関係人」という。)に対し、当該聴聞に関する手続に参加することを求め、又は当該聴聞に関する手続に参加することを許可することができる。
2 前項の規定により当該聴聞に関する手続に参加する者(以下「参加人」という。)は、代理人を選任することができる。
3 前条第二項から第四項までの規定は、前項の代理人について準用する。この場合において、同条第二項及び第四項中「当事者」とあるのは、「参加人」と読み替えるものとする。
行政手続法 第17条では、参加人について定めています。
関係人が参加人となるのは、主宰者の職権による場合と関係人の求めに基づき、主宰者が許可を与えた場合になります。
また、参加人は代理人を選任することができます。
行政手続法 第18条 文書等の閲覧
1 当事者及び当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人(以下この条及び第二十四条第三項において「当事者等」という。)は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、当該事案についてした調査の結果に係る調書その他の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。この場合において、行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むことができない。
2 前項の規定は、当事者等が聴聞の期日における審理の進行に応じて必要となった資料の閲覧を更に求めることを妨げない。
3 行政庁は、前二項の閲覧について日時及び場所を指定することができる。
行政手続法 第18条では、文書等の閲覧について定めています。
当事者と参加人は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、行政庁に対し、不利益処分に関する資料の閲覧をすることを求めることができます。
不利益処分に関する資料の閲覧の求めは、行政庁に対して行います。
主宰者と間違えないようにしてください。
また、例外として、行政庁が資料の閲覧を拒否できる場合として、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときを定めています。
これ以外の場合に行政庁は、資料の閲覧を拒否することはできません。
行政手続法 第19条 聴聞の主宰
1 聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、聴聞を主宰することができない。
一 当該聴聞の当事者又は参加人
二 前号に規定する者の配偶者、四親等内の親族又は同居の親族
三 第一号に規定する者の代理人又は次条第三項に規定する補佐人
四 前三号に規定する者であった者
五 第一号に規定する者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人
六 参加人以外の関係人
行政手続法 第19条では、聴聞の主宰について定めています。
行政手続法 第19条では原則として、主宰者になれる者を定め、例外として主宰者になれない者を定めています。
行政手続法 第20条 聴聞の期日における審理の方式
1 主宰者は、最初の聴聞の期日の冒頭において、行政庁の職員に、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項並びにその原因となる事実を聴聞の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。
2 当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出し、並びに主宰者の許可を得て行政庁の職員に対し質問を発することができる。
3 前項の場合において、当事者又は参加人は、主宰者の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
4 主宰者は、聴聞の期日において必要があると認めるときは、当事者若しくは参加人に対し質問を発し、意見の陳述若しくは証拠書類等の提出を促し、又は行政庁の職員に対し説明を求めることができる。
5 主宰者は、当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても、聴聞の期日における審理を行うことができる。
6 聴聞の期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しない。
行政手続法 第20条では、聴聞の期日における審理の方式について定めています。
当事者又は参加人は、聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出することができます。
当事者だけではなく、参加人も聴聞の期日に出頭して、意見を述べ、及び証拠書類等を提出することができるのです。
また、当事者又は参加人は、行政庁の職員に対して質問をする場合は主宰者の許可が必要です。
聴聞の期日における審理は、非公開です。
行政庁が公開することを相当と認める場合は公開されます。
審理を公開するかどうかを決めるのは、主宰者ではなく、行政庁であることに注意が必要です。
行政手続法 第21条 陳述書等の提出
1 当事者又は参加人は、聴聞の期日への出頭に代えて、主宰者に対し、聴聞の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
2 主宰者は、聴聞の期日に出頭した者に対し、その求めに応じて、前項の陳述書及び証拠書類等を示すことができる。
行政手続法 第21条では、陳述書等の提出について定めています。
聴聞は行政手続法 第20条 5項に定められているように一部の出頭するものがいなくても、審理を行うことができます。
そこで、聴聞に出頭できない当事者又は参加人には、出頭に代えて主宰者に対して、陳述書及び証拠書類等を提出することができます。
陳述書及び証拠書類等を提出先は行政庁ではなく、主宰者に対してです。
行政手続法 第22条 続行期日の指定
1 主宰者は、聴聞の期日における審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認めるときは、さらに新たな期日を定めることができる。
2 前項の場合においては、当事者及び参加人に対し、あらかじめ、次回の聴聞の期日及び場所を書面により通知しなければならない。ただし、聴聞の期日に出頭した当事者及び参加人に対しては、当該聴聞の期日においてこれを告知すれば足りる。
3 第十五条第三項の規定は、前項本文の場合において、当事者又は参加人の所在が判明しないときにおける通知の方法について準用する。この場合において、同条第三項中「不利益処分の名あて人となるべき者」とあるのは「当事者又は参加人」と、「掲示を始めた日から二週間を経過したとき」とあるのは「掲示を始めた日から二週間を経過したとき(同一の当事者又は参加人に対する二回目以降の通知にあっては、掲示を始めた日の翌日)」と読み替えるものとする。
行政手続法 第22条では、続行期日の指定について定めています。
聴聞の期日における審理の結果、なお聴聞を続行する必要があると認めるときは新たに期日を定めて聴聞を行います。
この判断を行うのは、行政庁ではなく、主宰者になります。
行政手続法 第23条 当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結
1 主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、又は参加人の全部若しくは一部が聴聞の期日に出頭しない場合には、これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる。
2 主宰者は、前項に規定する場合のほか、当事者の全部又は一部が聴聞の期日に出頭せず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書又は証拠書類等を提出しない場合において、これらの者の聴聞の期日への出頭が相当期間引き続き見込めないときは、これらの者に対し、期限を定めて陳述書及び証拠書類等の提出を求め、当該期限が到来したときに聴聞を終結することとすることができる。
行政手続法 第23条では、当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結について定めています。
主宰者又は参加人が正当な理由がなく聴聞に不出頭をした場合には、聴聞を終結することができます。
この決定をするのも行政庁ではなく、主宰者になります。
行政手続法 第24条 聴聞調書及び報告書
1 主宰者は、聴聞の審理の経過を記載した調書を作成し、当該調書において、不利益処分の原因となる事実に対する当事者及び参加人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
2 前項の調書は、聴聞の期日における審理が行われた場合には各期日ごとに、当該審理が行われなかった場合には聴聞の終結後速やかに作成しなければならない。
3 主宰者は、聴聞の終結後速やかに、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、第一項の調書とともに行政庁に提出しなければならない。
4 当事者又は参加人は、第一項の調書及び前項の報告書の閲覧を求めることができる。
行政手続法 第24条では、聴聞調書及び報告書について定めています。
行政手続法 第25条 聴聞の再開
1 行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、主宰者に対し、前条第三項の規定により提出された報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができる。第二十二条第二項本文及び第三項の規定は、この場合について準用する。
行政手続法 第25条では、聴聞の再開について定めています。
聴聞の終結後に聴聞の再開を命じるのは、行政庁になります。
行政手続法 第26条 聴聞を経てされる不利益処分の決定
1 行政庁は、不利益処分の決定をするときは、第二十四条第一項の調書の内容及び同条第三項の報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌してこれをしなければならない。
行政手続法 第26条では、聴聞を経てされる不利益処分の決定について定めています。
ここでは、参酌という言葉が出てきますが、これは必ずその意見に従わなくはいけないというわけではなく、その意見を参考にするという程度のものです。
行政手続法 第27条 審査請求の制限
1 この節の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができない。
行政手続法 第27条では、審査請求の制限について定めています。
聴聞の手続き上の処分又は不作為については、審査請求をすることはできません。
例えば、当事者や参加人に何の理由もなく、資料の閲覧を拒否した場合等については審査請求をすることができません。
ただし、聴聞の手続きの結果になされた不利益処分については、審査請求をすることができます。
行政手続法 第28条 役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例
1 第十三条第一項第一号ハに該当する不利益処分に係る聴聞において第十五条第一項の通知があった場合におけるこの節の規定の適用については、名あて人である法人の役員、名あて人の業務に従事する者又は名あて人の会員である者(当該処分において解任し又は除名すべきこととされている者に限る。)は、同項の通知を受けた者とみなす。
2 前項の不利益処分のうち名あて人である法人の役員又は名あて人の業務に従事する者(以下この項において「役員等」という。)の解任を命ずるものに係る聴聞が行われた場合においては、当該処分にその名あて人が従わないことを理由として法令の規定によりされる当該役員等を解任する不利益処分については、第十三条第一項の規定にかかわらず、行政庁は、当該役員等について聴聞を行うことを要しない。
行政手続法 第27条では、役員等の解任等を命ずる不利益処分をしようとする場合の聴聞等の特例について定めています。