行政行為の4つの効力。公定力、不可争力、不可変更力、執行力とは何か?

行政行為には、4つの特別な効力があります。

行政行為の4つの効力

  1. 公定力
  2. 不可争力
  3. 不可変更力
  4. 執行力

それぞれ、どのような効力があるか見ていきましょう。

公定力とは何か?

公定力のイメージ

公定力とは、行政行為に瑕疵があっても、その行政行為が重大かつ明白な瑕疵でない限り、権限ある行政庁または裁判所によって取り消されるまでは、有効として扱われるという効力です。

例えば、ある人に20万円の課税をすべきところに誤って50万円の課税処分をしてしまった場合、これは違法なものでありますが、この違法が重大かつ明白な瑕疵でない限り、この行政行為は一応有効として作用します。

重大かつ明白な瑕疵は無効な行政行為として扱われるため、公定力の効力は及びません

不可争力とは何か?

不可争力のイメージ

不可争力とは、行政行為に瑕疵があっても、一定期間が経過すると相手方からは行政行為の効力を争うことができなくなる効力です。

ただし、一定期間が経過した後でも行政庁は職権で当該行政行為を取り消すことは可能です。

また、重大かつ明白な瑕疵がある行政行為には不可争力の効力は及びません。

不可争力の一定期間とは?

不可争力の一定期間とは、行政不服審査法でいう審査請求期間(行政不服審査法 第18条)や行政事件訴訟法でいう出訴期間(行政事件訴訟法 第14条)を指しています。

行政不服審査法 第18条

1 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

行政事件訴訟法 第14条

1 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

2 取消訴訟は、処分又は裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

3 処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前二項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したとき又は当該裁決の日から一年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

ただし、この一定期間が経過しても、行政庁は当該行政行為を職権で取り消すことができます。

不可変更力とは何か?

不可変更力

公定力および不可争力の説明であったように行政庁は基本的に行政行為を職権で取り消すことができます。

ただし、行政庁が職権で取り消すことができない行政行為があります。それは、争訟裁断的行政行為である場合です。

このような争訟裁断的行政行為を行政庁が取り消しまたは変更することができなくなる効力を不可変更力といいます。

争訟裁断的行政行為とは何か?

行政不服審査法では、行政庁がした行政行為が違法または不当であれば、不服申し立てをすることができます。
こういった不服申し立てに対して行った行為を争訟裁断的行政行為と呼びます。
例として行政不服審査法に基づく審査請求に対する裁決が挙げられます。

執行力とは何か?

執行力

執行力とは、行政行為によって命じられた義務を相手が履行しない場合に、行政庁が自ら裁判所の力を借りずに、その義務を強制的に実現することができる効力です。

ただし、強制的に義務を実現させるためには法律の根拠が必要になりますので、全ての行政行為に執行力が認められているわけではありません。