申請に対する処分 行政手続法

ここから行政手続法 第2章に入ります。行政手続法の第2章では、申請に対する処分について定めています。

ネコ丸

申請、処分ってどんな事か忘れた。
行政手続法 第2条を確認してみよう。
ここで、申請と処分についての意義が定められているよ。

マサル

行政手続法 第2条

二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。

三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。

この章では、このような申請に対する処分についての規定が定められています。
条文には、申請をすると行政庁から諾否の応答があると定められています。諾否の応答があるということは行政庁は申請に対して何かしらの審査をしているという事です。

この審査時の判断基準を審査基準と呼ばれています。

関連記事:申請と届出の違いについて

申請と届出の違い。

第二章 申請に対する処分

行政手続法の第二章 申請に対する処分は、第5条~第11条で構成されています。

行政手続法 第5条 審査基準

行政手続法 第5条

1 行政庁は、審査基準を定めるものとする。

2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。

3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。

行政手続法 第5条では、審査基準について定めています。
先ほどの話のように、行政庁は申請に対して審査をして、諾否の応答を行います。
そのための基準を審査基準として定めています。

行政法を勉強する上で気をつけなくてはいけない事は、その内容が法的義務なのか、それとも努力義務なのかという事です。

行政手続法 第5条を見てみましょう。
ここでは、審査基準について定めていますが、審査基準を定めることは法的義務でしょうか?努力義務でしょうか?

行政手続法 第5条1項を見ると、”審査基準を定めるものとする。”とあります。
そのため、審査基準を定めることは法的義務だということがわかります。

行政手続法 第5条2項、3項についても、文章を見る限り、法的義務だということがわかります。

ネコ丸

法的義務と努力義務ってなに?
法的義務とは、法律で定められている義務だね。
行政手続法 第5条 審査基準については定めなくてはならないから、法的義務だよ。

マサル

努力義務は、その義務をするように努めなくてはならないものだね。
行政手続法 第6条の標準処理期間については定めるように努めるとある。

マサル

行政手続法 第6条 標準処理期間

行政手続法 第6条行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間(法令により当該行政庁と異なる機関が当該申請の提出先とされている場合は、併せて、当該申請が当該提出先とされている機関の事務所に到達してから当該行政庁の事務所に到達するまでに通常要すべき標準的な期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。

行政手続法 第6条では、標準処理期間について定めています。

標準処理期間というのは、申請が事務所に到達したときから、申請に対する処分をするまでの通常要すべき標準的な期間のことです。

こちらの条文に関してはどうでしょうか。
それぞれ定められていることが法的義務か努力義務かわかりますでしょうか?

申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとありますので、標準処理期間を定めることに関しては、努力義務であることがわかります。

また、標準処理期間を定めた場合は、これらの当該申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により公にしておかなければならない。とありますので、標準処理期間を定めた場合にそのことを公にすることは法的義務ということになります。

行政手続法 第7条 申請に対する審査、応答

行政手続法 第7条行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることその他の法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者(以下「申請者」という。)に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。

行政手続法 第7条では、申請に対する審査、応答について定めています。

行政庁は申請が事務所に到達したときに遅滞なく申請の審査を開始しなければなりません。これは法的義務です。

ここで、”遅滞なく”、”速やか”にという二つの速さ(早さ)を表す単語が出てきました。
“遅滞なく”、”速やか”のどちらがより速い(早い)かというと、”速やかに”が”遅滞なく”より速い(早い)です。

他に速さ(早さ)を表す単語で”直ちに”という単語がありますが、これがこの中で一番の速さ(早さ)を表す単語になります。

直ちに > 速やかに > 遅滞なく
の順番に速い(早い)ということになります。

この順番については過去に試験にも出たことがあるので、覚えておいても損はないと思います。

行政手続法 第8条 理由の提示

行政手続法 第8条

1 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。

2 前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。

行政手続法 第8条では、理由の提示について定めています。

行政庁は申請を拒否する処分をする場合は、申請者に対して、同時になぜ拒否処分になったかの理由を示さなければなりません。

ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。とされています。

法律を覚えるときは原則と例外を覚えるようにしよう。

マサル

行政手続法 第8条で定めているのは、原則として、拒否処分をする場合は拒否処分の理由を示さなければならないということで、例外として、申請者の求めがあったときに拒否処分の理由を示せば足りる場合があり、それは当該申請が要件等に適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときだね。

マサル

また、行政手続法 第8条2項をみてみると、申請を拒否する処分を書面でするときは、理由は、書面により示さなければならない。とあります。

申請を拒否する処分は、口頭、書面ですることも可能ですが拒否する処分を書面でする場合は、理由も書面で示す必要があります。

行政手続法 第9条 情報の提供

行政手続法 第9条

1 行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請に係る審査の進行状況及び当該申請に対する処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。

2 行政庁は、申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ、申請書の記載及び添付書類に関する事項その他の申請に必要な情報の提供に努めなければならない。

行政手続法 第9条では、情報の提供について定めています。

どちらの情報の提供に関しても努力義務になっています。

行政手続法 第10条 公聴会の開催等

行政手続法 第10条

1 行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが当該法令において許認可等の要件とされているものを行う場合には、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。

行政手続法 第10条では、公聴会の開催等について定めています。

公聴会の開催についても努力義務となっています。

行政手続法 第11条 複数の行政庁が関与する処分

行政手続法 第11条

1 行政庁は、申請の処理をするに当たり、他の行政庁において同一の申請者からされた関連する申請が審査中であることをもって自らすべき許認可等をするかどうかについての審査又は判断を殊更に遅延させるようなことをしてはならない。

2 一の申請又は同一の申請者からされた相互に関連する複数の申請に対する処分について複数の行政庁が関与する場合においては、当該複数の行政庁は、必要に応じ、相互に連絡をとり、当該申請者からの説明の聴取を共同して行う等により審査の促進に努めるものとする。

行政手続法 第11条では、複数の行政庁が関与する処分について定めています。

行政手続法 第11条1項では、法的事務を定めて第11条2項では、努力義務を定めています。