行政手続法の適用除外について

行政手続法の第3条には、行政手続法が適用されない行政手続きについて定められています。

行政手続法の適用除外にはどんなものがあるの?

行政手続法 第3条 適用除外

行政手続法 第3条1項

次に掲げる処分及び行政指導については次章から第四章の二までの規定は、適用しない。

一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分

二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分

三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分

四 検査官会議で決すべきものとされている処分及び会計検査の際にされる行政指導

五 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導

六 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び行政指導並びに金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分及び行政指導

七 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分及び行政指導

八 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院、少年鑑別所又は婦人補導院において、収容の目的を達成するためにされる処分及び行政指導

九 公務員(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項に規定する国家公務員及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第三条第一項に規定する地方公務員をいう。以下同じ。)又は公務員であった者に対してその職務又は身分に関してされる処分及び行政指導

十 外国人の出入国、難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導

十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分

十二 相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に基づいてされる裁定その他の処分(その双方を名宛人とするものに限る。)及び行政指導

十三 公衆衛生、環境保全、防疫、保安その他の公益に関わる事象が発生し又は発生する可能性のある現場において警察官若しくは海上保安官又はこれらの公益を確保するために行使すべき権限を法律上直接に与えられたその他の職員によってされる処分及び行政指導

十四 報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導

十五 審査請求、再調査の請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の処分

十六 前号に規定する処分の手続又は第三章に規定する聴聞若しくは弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において法令に基づいてされる処分及び行政指導

行政手続法の第3条には”次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。”としています。

次章は第2章である”申請に対する処分”であり、そこから第4章の2 処分等の求めまでこれらの規定は適用されないということになります。

ネコ丸

こんなに覚えられないぞ…
この適用除外についても覚えるべき?
そんなに真剣に覚えようとしなくていいよ。
この事項については覚えられたら覚えよう。
行政手続法の適用除外については、行政書士試験では、頻出しているテーマだから重要だよ。

マサル

行政手続法 第3条2項

次に掲げる命令等を定める行為については、第六章の規定は、適用しない。

一 法律の施行期日について定める政令

二 恩赦に関する命令

三 命令又は規則を定める行為が処分に該当する場合における当該命令又は規則

四 法律の規定に基づき施設、区間、地域その他これらに類するものを指定する命令又は規則

五 公務員の給与、勤務時間その他の勤務条件について定める命令等

六 審査基準、処分基準又は行政指導指針であって、法令の規定により若しくは慣行として、又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの

行政手続法 第3条2項では、第6章の規定が適用されないものを列挙しています。
第6章は意見公募手続等を定めているので、行政手続法 第3条2項に挙げられているものは、意見公募手続の規定には適用されないということになります。

行政手続法 第3条3項

第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。

行政手続法 第3条3項では、地方公共団体の機関がする処分、行政指導、地方公共団体の機関に対する届出、地方公共団体の機関が命令等を定める行為についての適用除外が定められています。

行政手続法 第3条3項では第2章から第6章までの規定は適用しない。とあります。行政手続法は全7章からなっており、第2章から第6章までで申請に対する処分、不利益処分、行政指導、届出、意見公募手続等が定められているので、第2章から第6章までの規定は適用しないということは行政手続法が適用されないと考えてもらっても問題ありません。

行政手続法 第3条3項を細かく見ていくと、地方公共団体の機関がする処分と地方公共団体の機関に対する届出に関しては、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものについては第2章から第6章までの規定は適用しないとあります。

逆に考えると、地方公共団体の機関がする処分と地方公共団体の機関に対する届出に関しては、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれていないものについては、第2章から第6章までの規定は適用されることになります。

また、地方公共団体の機関がする行政指導、地方公共団体の機関が命令等を定める行為については第2章から第6章までの規定は適用しないとあります。

表にまとめると以下のようになります。

地方公共団体の機関がする処分と地方公共団体の機関に対する届出 その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものについては行政手続法の適用無し
その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものについては行政手続法の適用有り
地方公共団体の機関がする行政指導、地方公共団体の機関が命令等を定める行為 行政手続法の適用無し

地方公共団体の機関がする行為に関しては、地方公共団体の機関がする処分と地方公共団体の機関に対する届出だけが行政手続法の適用を受けると覚えておきましょう。

ただし、これらの行政手続法の適用除外とされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続については、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。

これは行政手続法 第46条に定められています。

行政手続法 第46条

1 地方公共団体は、第三条第三項において第二章から前章までの規定を適用しないこととされた処分、行政指導及び届出並びに命令等を定める行為に関する手続について、この法律の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

国の機関等に対する処分等の適用除外

行政手続法 第4条

1 国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。

2 次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって、当該法人の監督に関する法律の特別の規定に基づいてされるもの(当該法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。

一 法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人

二 特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、その行う業務が国又は地方公共団体の行政運営と密接な関連を有するものとして政令で定める法人

3 行政庁が法律の規定に基づく試験、検査、検定、登録その他の行政上の事務について当該法律に基づきその全部又は一部を行わせる者を指定した場合において、その指定を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員)又は職員その他の者が当該事務に従事することに関し公務に従事する職員とみなされるときは、その指定を受けた者に対し当該法律に基づいて当該事務に関し監督上される処分(当該指定を取り消す処分、その指定を受けた者が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる処分又はその指定を受けた者の当該事務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。

4 次に掲げる命令等を定める行為については、第六章の規定は、適用しない。

一 国又は地方公共団体の機関の設置、所掌事務の範囲その他の組織について定める命令等

二 皇室典範(昭和二十二年法律第三号)第二十六条の皇統譜について定める命令等

三 公務員の礼式、服制、研修、教育訓練、表彰及び報償並びに公務員の間における競争試験について定める命令等

四 国又は地方公共団体の予算、決算及び会計について定める命令等(入札の参加者の資格、入札保証金その他の国又は地方公共団体の契約の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定める命令等を除く。)並びに国又は地方公共団体の財産及び物品の管理について定める命令等(国又は地方公共団体が財産及び物品を貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又はこれらに私権を設定することについて定める命令等であって、これらの行為の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定めるものを除く。)

五 会計検査について定める命令等

六 国の機関相互間の関係について定める命令等並びに地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二編第十一章に規定する国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係その他の国と地方公共団体との関係及び地方公共団体相互間の関係について定める命令等(第一項の規定によりこの法律の規定を適用しないこととされる処分に係る命令等を含む。)

七 第二項各号に規定する法人の役員及び職員、業務の範囲、財務及び会計その他の組織、運営及び管理について定める命令等(これらの法人に対する処分であって、これらの法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又はこれらの法人の役員若しくはこれらの法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分に係る命令等を除く。)

行政手続法 第4条では、国の機関等に対する処分等の適用除外が定められています。

ここでは、国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分と国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する届出でこれらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限るものに関しては行政手続法が適用されないという事が定められています。

また、国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する行政指導に関しては行政手続法が適用されません。

また、行政手続法 第4条4項で第6章の規定が適用されないものを列挙しています。
第6章は意見公募手続等を定めているので、ここに列挙されている項目も意見公募手続等が適用がないということを確認しておきましょう。

ネコ丸

条文をみると、かなりの項目が行政手続法の適用外のように感じるね。
そうかもね。
でも、行政手続法は一般法であることを忘れないでね。
ここに挙げられている項目以外の処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続については行政手続法が適用されるよ。

マサル

行政手続法 第1条2項

処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関しこの法律に規定する事項について、他の法律に特別の定めがある場合は、その定めるところによる。

行政手続法の第1条2項にもあるように行政手続法は一般法ですので、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関して他の法律に特別の定めがある場合以外はこの法律が適用されることになります。