違法と不当の違いとは?

違法と不当について、いまいち違いがわからないという人がいると思いますので、ここではその違いについて説明していきます。

違法とは法律違反のこと。不当とは、法律違反ではないが妥当ではないこと

違法とは法律違反で、不当とは、法律違反ではないが妥当ではない

簡単にいうと、違法とは法律違反で、不当とは、法律違反ではないが妥当ではないこということです。

この両方の言葉がわかっていると、行政法の理解が進みます。
行政書士試験では、行政不服審査法と行政事件訴訟法という法律の問題が頻出します。

行政不服審査法は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に対しての不服申立ての手続きが定めてある法律です。
簡単にいうと、行政庁がした行為に不服があれば、その行為を取り消してもらう等の不服申し立てができます。

行政不服審査法の第1条をみてみましょう。

行政不服審査法 第1条

一 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

第1条に定められているとおり、行政不服審査法では行政庁が行う違法又不当である処分その他公権力の行使に当たる行為に対して不服申し立てができます。
不服申し立ては、行政側に申し立てます。

一方、行政事件訴訟法も行政行為によって権利が侵害された者が不服を申し立てる際の手続きに関しての法律ですが、行政事件訴訟法では裁判所に申し立てます。

そのため、行政行為の違法性が審理の対象となります。不当な行政行為に対しては、審査の対象にならないのです。

この事が理解できていれば、例えば、行政事件訴訟法の場合は違法および不当が審理の対象となるというような問題がでた場合は、迷わず×とすることができるようになります。
こういった内容の問題もまれに試験で問われる場合があります。

裁量権と不当の関係

行政庁には、一定の「裁量権」が認められています。裁量権とは、行政庁がその業務を遂行する際に、一定の範囲で自由に判断できる権限のことです。しかし、裁量権の行使が妥当でない場合、それは「不当」とみなされることがあります。

例えば、許認可において、申請者が法律上の要件をすべて満たしているにもかかわらず、行政庁が不合理な理由で許可を拒否した場合、その判断は「不当」とされます。このようなケースでは、法律に違反しているわけではないため「違法」にはなりませんが、行政の裁量権が不適切に行使されたことにより「不当」と判断されます。

行政書士試験では、行政庁の裁量権がどのように行使されるべきか、そしてその判断が「不当」であった場合にどのような手続きが可能かについて問われることがあります。そのため、裁量権と不当の関係を正しく理解しておくことが重要です。

違法と不当の具体例

違法と不当の違いをより具体的に理解するために、いくつかの例を挙げてみましょう。

違法の例

無許可での建築物の設置:法律で定められた許可を得ずに建築物を設置した場合、これは法律に反しているため「違法」となります。

行政手続の省略:法定の手続きを省略して、行政処分を行った場合も「違法」です。例えば、事前の通知や意見陳述の機会を与えずに処分を行った場合、その処分は違法となる可能性があります。

不当の例

裁量の不適切な行使:例えば、ある店舗に対する営業許可申請があった場合に、他の店舗には許可を与えているにもかかわらず、特定の店舗に対してのみ厳しい基準を適用して許可を拒否した場合、法律に違反しているわけではないが「不当」と判断される可能性があります。

過度な制約の課税:行政庁が裁量に基づいて課税を行う場合に、特定の納税者に対して過度な負担を強いるような課税を行った場合、これも「不当」とみなされることがあります。

違法と不当の違いの重要性

行政書士試験では、違法と不当の違いを理解しているかどうかが問われることがよくあります。例えば、行政事件訴訟法において審理の対象となるのは違法な行為のみであるため、問題文で「不当な処分も審理対象である」と記載されていれば、それは誤りであると判断できます。このように、違法と不当の違いをしっかりと理解しておくことが、正確に問題に対応するための鍵となります。

また、行政不服審査法においては、違法な処分だけでなく不当な処分についても不服申し立てが可能です。そのため、違法と不当のどちらに該当するかによって、利用すべき手続きが変わってくることも理解しておく必要があります。

不当な処分に対する対応

不当な処分に対しては、行政不服審査法に基づいて行政庁に対して異議を申し立てることが可能です。これにより、行政庁に再度その処分の適正性を検討してもらう機会を得ることができます。不当な処分は、法律に反しているわけではないため裁判所に訴えることはできませんが、行政庁内部での是正を求めることができるのです。

このような手続きは、行政が適正に行われているかどうかを監視し、国民の権利を守るために重要な役割を果たしています。行政書士として、こうした仕組みを理解し、適切にアドバイスできることは非常に重要です。

まとめ

「違法」と「不当」の違いを理解することは、行政法において欠かせない基礎的な知識です。違法とは、法律に違反している行為を指し、裁判で取り消される可能性があります。一方、不当とは、法律に違反していないが適切でない行為であり、主に行政不服審査によって是正が図られます。

行政書士試験では、この違いを理解することで、適切に問題を解くことができるようになります。また、実務においても、行政行為に対する適切な救済手段を選択するためには、違法と不当の区別を正確に理解することが求められます。しっかりと押さえて、試験対策に活かしましょう。